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私たちについて

趣旨

我が国では急速な高齢化が進展しており、医療の分野においても未曽有の超高齢社会に対応することが重要な課題となっております。日本脳神経外傷学会の重症頭部外傷登録事業「日本頭部外傷データバンク」でも例に漏れず年々高齢化率が上昇しており、最新のプロジェクト2015(2015~2017年登録)では半数を超えております。高齢者頭部外傷に対しても積極的に治療を試みているものの、残念ながら若年者や成人と比較し転帰不良例が多いのが現状です。
 これを打破するためには、高齢者頭部外傷の原因・特徴・予後悪化要因の理解が重要です。以前は、頭部外傷の原因として若年者の交通事故等による高エネルギー外傷が大半を占めておりました。しかし近年では、フレイルを基盤とした高齢者の転倒・転落等による低エネルギー外傷へと変容してきております。高齢者の特徴としては1)脳萎縮や脳血管・実質の脆弱性のために、容易に脳挫傷や急性硬膜下血腫が出現する、2)頭蓋内間隙が大きくなっているために頭蓋内圧亢進症状出現が遅延するが、一旦出現すれば急速に進行することが上げられます。一方、加齢に伴う脳梗塞や心房細動の増加に伴い、抗血小板薬や抗凝固薬を内服する方が多く、これが予後を悪化せしめている可能性が懸念されています。
 日本頭部外傷データバンクの解析によりますと、「抗血栓薬服用者は非服用者と比較して出血性病変が有意に多い」また、「抗血栓薬服用者はtalk & deteriorate(受傷後暫くは意識状態良好だが、その後頭蓋内圧亢進による神経症状悪化が急激に起こる)の頻度が有意に高い」ことがわかりました。すなわち、我が国の高齢者頭部外傷では、先ほど懸念された特徴・予後悪化要因がreal worldでも転帰を不良にしています。その中で、修正可能であるものは抗血栓薬による影響であることも明らかとなりました。
 現状では、抗血栓薬に携わる循環器科医、脳卒中医、救急医、脳神経外科医ですら、このような状況を理解しておられる方は少ないと思われますし、昨今ではそれぞれの副作用や合併症のみならず、中和方法などの最新知識が必須となっております。また、抗血栓薬を内服している頭部外傷例の病態や疫学的な研究は十分でなく、その対応に関する標準的ガイドラインの作成も必須であります。一方、患者さんや家族のご理解は皆無に近いと危惧しております。従って、1)抗血栓薬服用中の頭部外傷では、たとえ軽症であっても医師を受診することが重要であり、2)必要あれば画像診断や厳重な神経症状観察とともに、3)病変があれば抗血栓薬の中和も考慮する等の患者さんや家族、そして医療従事者への啓蒙活動により高齢者頭部外傷患者の転帰改善が可能であると考えています。
 “Think FAST”campaignでは、マスメディアを通しての転倒・転落による高齢者頭部外傷(特に抗血栓薬内服者)の危険性、あるいは対応について一般市民への啓蒙活動を行いたいと考えております。また、薬業界の方々のご協力を得て、学会における講演・セミナー、或いは医療従事者向け配布物等を通じて、抗血栓薬内服中の高齢者頭部外傷におけるリスクマネージメントについての周知活動や、当該患者の病態や疫学的な研究と治療ガイドラインの作成をめざしたいと希望します。

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